音声ガイド ※お持ちのイヤホンをご利用ください。
音声ガイド本文
むかし、長崎の中島川上流の谷あいから、夕方になると美しい笛の音色が流れてきました。「なんと美しい笛の音だろう。あれはお竹さんの笛の音だ……」と村人の間でも評判でした。お竹さんは、村役人の一人娘でした。ある夏の夕暮れ、お竹さんが笛を吹きながら谷あいを歩いていると、笛の音に耳を澄ませる気高い若者が林の中に立っていました。お竹さんは若者の美しい姿に想いを寄せ、翌晩も谷あいで笛を吹いていると、月明かりに照らされる若者を見つけました。そうして、二人は笛の音に引き合わされ、幾晩も会っている間に、愛し合う仲となりました。「お竹さんの笛の音は、この頃は一層冴えて美しくなっている。」と村の皆は口々に言いました。そんなある日、お竹さんの姿が、ふっつりと消えてしまいました。お竹さんの父親は大層心配して、村人たちと手分けして探しましたが、全く行方がつかめません。ついには、一人の修験者に占ってもらいました。修験者を先頭に、“城の古址”の山道をどんどん登ると、頂上近くの龍頭岩の上で月光に照らされながら、しっかりと抱き合うお竹さんと若者の姿を見つけたのです。修験者は呪文を唱えて、「エイッ!」と一声叫びました。すると、若者は一匹の大蛇に変わり、白い煙を吐きながら森の中に消えていきました。お竹さんは気高い若者を忘れられず、生涯想い焦がれ続けました。それからのこと、この龍頭岩を竹で叩くと「タンタン、タケジョ」と鳴るので、大岩は「タンタンタケジョ」と呼ばれるようになりました。
参考 / 吉松祐一『[新版]日本の民話48 長崎の民話』未來社、近藤祐一『長崎の昔ばなし第一集』竹下隆文堂
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