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音声ガイド本文
むかし、一人の泥棒が長崎のまちで一稼ぎして、盗んだものを大きな風呂敷に背負って歩いていました。ふと見ると、道端の祠にお地蔵様が立っていることに気づき、これは悪事を見られたと思い、ギョッとしました。「お地蔵様、お許しください。誰にも言わないようにしてください。」泥棒は手を合わせて拝みました。「一度だけ、見逃してあげましょう。あなたも人に話さないように。」お地蔵様はそう答えると、顔をくるりと横に向けました。そうして、泥棒は何度も頭を下げながら、立ち去りました。三年後、泥棒がまた祠の前を通りかかると、お地蔵様はあのときのまま、顔を横に向けて立っていました。男は驚き、大変感心して、そこでお参りしていた人に、あの晩の出来事を詳しく話しました。「このお地蔵様はとてもありがたい方です。願うことは、必ず聞いてくださいます……」すると、話を聞いていた人は途端に怒り出しました。「さては、三年前の晩、うちの大切な着物や道具類を盗んだのは、お前だったのだな!」そう言うと、泥棒を奉行所に突き出しました。お地蔵様は、何もかもお見通しだったのです。このことはたちまち噂となり、それから「横向き地蔵様」と呼ばれて尊信されました。
参考 / 吉松祐一『[新版]日本の民話48 長崎の民話』未來社、近藤祐一『長崎の昔ばなし第一集』竹下隆文堂
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