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音声ガイド本文
むかし、長崎の館内には、貿易でやってきた中国人だけを住まわせた唐人屋敷があり、そこには幽霊堂と呼ばれる建物がありました。ここでは、航海の途中や唐人屋敷で亡くなった中国人たちを弔うため、位牌を納めていましたが、いつの頃からか、ここには幽霊が住んでいると噂になっていました。中国人たちには、お葬式のときに棺に片方の靴を入れ、もう一方の靴を棺の上に載せて、葬式が終わると、片方の靴を家の人が持って帰って供養する、という風習がありました。葬式の晩、夜が更けてくると幽霊堂の方から、ペタパタ、ペタパタ……と片方ははだしで、片方には靴をはいたような足音が聞こえてきます。中国人の間では、「死者は、一度帰って来なければ恥」と信じられていたので、その不思議な足音を聞くと、故人が帰ってきた証として安心したそうです。しかし、次第にお堂の幽霊騒ぎが続いてきたので、霊魂を祀るために、年に一度「彩舟流し」という祭礼を始めました。これは幽霊たちを故郷の中国へ送り出すため、金銀の紙などで美しく飾った藁船にのせて、海に流すというものでした。これが、現在も長崎のお盆に行われている「精霊流し」の起源と言われています。
参考 / 吉松祐一『[新版]日本の民話48 長崎の民話』未來社、近藤祐一『長崎の昔ばなし第一集』竹下隆文堂
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